Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

『世界は「使われなかった人生」であふれてる』

昨日の午前中で申告も終り、ようやく解放。万歳! やっと、フリーだ!
標記の沢木耕太郎の映画評本を読む。これからの読書の日々の最初を飾ったのがこの本『世界は「使われなかった人生」であふれてる (幻冬舎文庫) [ 沢木耕太郎 ]』。子供の用事の待ち時間に行きつけの本屋で見つけた。読み出してすぐ、しまった、と思う。良すぎるのだ。雑誌「暮らしの手帖」に連載したものから30編を選んだものらしい。氏の映画評論は、他には朝日新聞に掲載の「銀の森へ」を読んだことがある。

ストーリーはこう、監督はこう、俳優はこう、というだけの映画批評ではなく、映画をあくまでも「人」をとらえ、映画に描かれる「人生」愛情あふれる文体でつづっている。夢男が観た映画についての文章を読んでみる。読んでると映画の場面がよみがえってくる。もう一度映画のダイジェスト版を見たような感じだ。こんな捉え方もあったのかと新鮮な気持ちにさせてくれる。
ところがだ、夢男が観てない映画についても、こちらの心に入り込む詳細な評論がなされているので、映画を観てなくとも映画を観た気になってしまう。これは困った。映画はある程度は予備知識なしで見たほうが絶対におもしろい。ネタバレはせっかくの映画鑑賞の楽しみの半分は奪ってしまう。ましてや、感じ方まで評論の通りになってしまいそうで、映画を観る前にはぜったいに読めないと思った。なので、結局この本の半分ぐらいは読み飛ばし。掲載の映画を観た後で読むほうが断然楽しめる本である。
同時購入『[rakuten:book:11468312:title]』所収の先の「銀の森へ」も同様のようだ。せっかくのおもしろい本なのに困った。読めば楽しめるのはわかっているのに、読んでしまったらその後の映画を観たときの楽しみが減る。掲載の映画はなかなか観れない場合が多い。するといつまでも本が読めない。残念。でも、それが「映画」と「沢木節」の両方を楽しむ最善の方法と思うのだ。ゆっくりと味わいたいと思う。