Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

愛と追憶の日々 -No.11 -p701

BS録画(初見)、☆5

シャーリー・マクレーン扮するオーロラは早くに夫を亡くし、一人娘のエマ(デブラ・ウィンガー)と姉妹のように暮らしていた。母に結婚を反対されているにもかかわらず、エマはフラップ(ジェフ・ダニエルズ)と結婚して遠方へ引っ越す。専業主婦として、大変ながらも3人の子育てに励むエマ。一方、オーロラは何人もの男友達に求愛されるも拒否。隣人の宇宙飛行士ギャレット(ジャック・ニコルソン)が気になりつつも、思い切った行動には至らない。そんな中、エマの夫のフラップの浮気が発覚。一見、平和だった家族に暗雲が…。そして…。

中学、高校とずっと映画雑誌「スクリーン」を買っていたこともあって、この映画が公開されてアカデミー賞の賞レースを賑わしたことは覚えている。でも、その頃の興味は「スター・ウォーズ/ジュダイの復讐」などのSFやアクション映画であり、かわいい女優(例えばフィービー・ケーツとか)が出てくる映画であって、この「愛と追憶の日々」のようなごく普通の生活の中にある家族を描いた映画などは二の次だったのだ。だって、そうでしょ、これからかわいい彼女ができて楽しい学生生活を送って(そんなことはありえないにもかかわらず…)、この田舎から出て行って想像もつかない場所で生活して(出て行けるかもわからないにもかかわらず)、素敵な人とめぐりあって結婚する(それもできるかどうかわからない!)というのに、人生はこうなんだ、という映画を観て納得してどうする!、といった気持ち満載の年頃だったからだ。でも皆が知っての通り、人生はだんだんわかってくるものなのだ。

そんな人生の半分を折り返したこの時期、この映画と再会。懐かしい気分で観たのだった、嫁さんと。結果、二人して泣いてた。だって、重なることが多いのだもの…。自分たちは既に気持ちはエマであり、フラップであり、オーロラ。皆の心がわかりすぎる。子供の心もわかりすぎる。決して、人生は劇的なものではないと知っている今、この映画に描かれていることは映画だけのものじゃないことも知っている。だからこそ、泣けたのだ。

アカデミー賞の主要な賞を総なめのこの映画は、主役の4人だけじゃなく脇役もうまい。オーロラの男友達のダニー・デヴィート、エマの浮気相手のジョン・リスゴーなど出番は少ないが個性派俳優たちがいい味を出してる。ダニー・デヴィートの演技には大笑い。ウマすぎる! シャーリー・マクレーンジャック・ニコルソンは文句なし。この映画で印象的なシーンは二人がコルベットに乗って砂浜を走るところ。なんとハンドルはニコルソンが足で、マクレーンはアクセル担当! 砂浜でオープンカーというとマックイーンの「華麗なる賭け」を思い出すが、こちらは大笑いしてしまうところが大違い。
でも、圧巻はデブラ・ウィンガーの母親としての演技。いちいち、うなずくこと多し。「愛と青春の旅立ち」の彼女が結婚したら、きっとこうなったのかもとも思う。そして、悲しくなる。

ブルックス監督はユーモアと悲劇をうまく混ぜ合せながら物語を進め、ふたり(注・ニコルソンとマクレーン)の演技も、現代の家族関係を物悲しく見つめた本作の出来を、さらに良くする方向に働いている。(JB)(『死ぬまでに観たい映画1001本』)

愛と幸せと怒りとあきらめ、そして悲しみ…。この映画こそ、人生の要素をすべて含有する映画だと思った。


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