Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

『Ex-formation 植物』おもしろい本、見つけた!

新聞の書籍広告に気持ち悪いぐらい形が整った大根の写真がありました。よくよく見ると武蔵野美術大学の学生さんがゼミで製作したものだそうな。そんな「未知化(エクスフォーメーション)された」作品の数々。大根の写真に魅かれて、すぐにオンライン書店に注文。それが今日届きました。

Ex‐formation植物

Ex‐formation植物

夢男は美術に詳しいわけじゃないし、それを批評する立場じゃないので、この作品集を見て、農家の立場からおもしろいと思ったことを書いてみます。

A6サイズぐらいの白いシンプルな装丁のこの本は、ゼミの学生さんの卒業製作の写真集。どの学生さんの作品も、農家である夢男から見て、変わった視点からの「植物」の表現。おもしろいです。その中でも印象に残ったものをいくつか。

「畝/UNE」
片面段ボールのヒダヒダに人工芝マットを貼ったという。まるで実際の畑の畝。キュウリ栽培でもグリーンのビニールマルチを使うので、この作品を見ると、あるある!、という感じ。定植直後の畑だね。もう少し経つと作物が大きく育つのと雑草が生えはじめたのとで、当初の均等感が薄れてくるのが実際の畑。植えたばかりの畑であるこの片面段ボールの頃は、これからくるであろう収穫を夢見て期待でいっぱいの頃。まさにこれから卒業する学生さんそのものだね。さわやかです、この作品。

「植物を食べている」
スーパーのに並んでいるトレイにラップされている食品。野菜であり、魚、肉である。ここでは学生さんは、松かさ、どんぐり、杉の輪切りなど、思わぬものをトレイにラップしてしまいました。生産現場、つまり畑などを見ない状態での一般の人の食品に対するイメージはこれでしょうね。ちょっと前だったら、魚屋さんや八百屋さん、肉屋さんの店頭には、商品であるそのものズバリが並んでいたのでしょうが、切り身になったりしての原形がわからない状態でトレイにパック。この作品のようにあらゆる植物をそのままトレイにパックしたら、自然を見る目が変わりそうですね。

「正しい大根」
アクリルかなんかでできた容器で育てた3Dモデラーレンダリングしたような大根の数々。実際の農業現場で、四角いスイカとかまっすぐキュウリにするための型とかあるようですが、そんなものと似た感じの作品ですね。みんな、野菜は図鑑のように整った形だとおいしそうに思うようですが、実際はなかなか全部がそうはならない。けど、曲がっているのが普通でしょ、とキュウリ農家の夢男に聞く人は多いけど、そこは声を大にして言いたい。「ちゃんと普通に育てば真直になるの、キュウリは。」そうです。曲がっちゃうのは何らかの問題があるということ。水分か、日照か、温度か、ストレスか。型に入れてまっすぐにしても、根本的な問題は解決されたわけではない。形がいろいろあるのが自然。でも、普通に順調に行ったら真直になる。どっちも「あるがままの状態」。うちの「正しいキュウリ」って、何。そんな風に思ってしまった作品でした。

「ビニールハウス」
驚きました。うちもビニールハウスがありますが、みんな、気になるのはそのビニールハウスの「中」なんですよね。雪で潰さないようにと、夢男はビニールハウスそのものを気にして、冬季間過ごしているのですが、そんな気持ちを悟ったようなこの作品。ビニールハウスのカレンダー、素敵です。自分も作ってみたいです、夢男のビニールハウスのカレンダー。うちの生活を支えてくれてありがとう、ビニールハウス。そんなビニールハウスへの愛情がいっぱい詰まった作品ですね。

『Ex-formation 植物』の中には、思わぬ「農業」がいっぱい詰まってました。ぜひ、「農業」に特化した『Ex-formation』も見たいです。おすすめの本です。