Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

春いろいろ

農家の春は何かと忙しい。資材会社や米集荷業者の販促をかねた各種講習会。キュウリ生産組合や農業サークルの総会。小学校のPTA役員会。消防団や地元、若者会の会合などなど。すべて、都会での独身サラリーマン生活には必要のなかったものばかりだ。


そして、この春の最大の行事、祖父の七回忌法要が今日終わった。じっちゃ(うちの方での祖父の呼び名)の兄弟、子供たちが続々と我が家に。夢男家は本家なので、うちが中心となる冠婚葬祭は、来る人の裾野がすごく広くなる。典型的田舎の「古い家」の行事となる。
じっちゃは86歳で前立腺がんで亡くなった。農家の長男として生まれたが、戦後、県職員を経て、定年まで職安に勤めていた。農業自体はばっちゃと父がやっていたので、いってみれば兼業農家の走りである。


今思えば、本当に家に帰ってきてよかったと思う。というのは、じっちゃに家に跡継ぎが帰ってきたことを見てもらったからだ。Uターンして5年間一緒に過ごした。嫁ももらったし、三女が産まれたのも見届けてもらった。もっと欲を言えば、もっと生きてもらって長男が生まれたことを知れば、さらに喜んだだろう。あのタイミングで戻ってこなかったら、すべてを知らずに死んでいったことになったかもしれない。それ考えると何ともいえないせつない気分にもなる。


なぜだか、祖父の仏事には天気が荒れる。例に漏れずに今回も寒波がきて大風。ビニールハウスの一部がやられてしまった。夜中に見に行ったときは大丈夫だったが、朝になって見てみたら破けていた。いつも強風のときに被害がでる場所だ。でも、たいしたことはない。きっと、俺はここにいるぞ、といいたいのだろう。みんなでそんな風に大笑いした。


注文していた肥料も配達され、いよいよ農作業が始まる。今年もとにかくがんばろうと思う。家族のため、そしてなによりも自分のために。自分の人生は自分のものであり、家のためとは思ったことはまったくないが、結婚して子供を育ててごくごく普通に生きていくことが、結果として家のためになっているようだ。普通の人が子孫に残せるものはそうある訳ではないが、夢男はせめて子供たちに「家族の暖かさ」だけは伝えたいと思う。未来永劫、不変であり続けるものは、それしかないと思うのである。