Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

癒し本

いさましいちびのトースター

12月にしては未曾有の大雪で年末まで除雪の毎日。明けて1月1日はは非常にいい天気。久々のゆったりした時間に読書することにした。選んだ本はこれ。


 『いさましいちびのトースター (ハヤカワ文庫SF)』(トーマス・M・ディッシュ)

森の中の別荘に置き去りにされた5台の電気器具たち、トースター・電気毛布・掃除機・卓上スタンド・AMラジオ。不安な日々を送っていたある時、いなくなった主人を探して旅に出る。でもその道中には幾多の困難が・・・。果たして、ご主人様は見つかるのか。


この作者のトーマス・M・ディッシュは、思い出深い作家である。というのは、夢男が小学校の図書館で少年少女向けのSF小説を借りまくっていた頃、初めて買った早川文庫のSFがこの作品だったのだ。その作品名は『人類皆殺し(The Genocides)』。図書館にあるSFはほとんど読んでしまい、「何かSF小説買ってきて〜」と買い物に行く母親に頼んだら、渡された本がこれ。普通、子供にこんなタイトルの本は絶対に買ってこないと思うのだが、SFといっても何を買っていいかわからない母親は、とりあえず手にとってしまったらしい。どちらかというとキャプテン・フューチャーレンズマン、宇宙船ビーグル号などの宇宙船ものが好きだったので、その物騒なタイトルに小学生の夢男はおののき、おどろおどろしい感じの表紙イラストだったこともあって、その何年後かまで読まずに本棚に置いていたものだった。でも、やっと高校生になり、ひまつぶしに読んでみたらと目からうろこが落ちるほどおもしろいかったことを覚えている。その内容もだが、その劇中描かれる男女の関係などをなんとか理解できるようになった自分自身が大人になりつつある頃だったことが、この作品がいまだに印象深く残っている理由だと思われる。

内容はちょっと変わった侵略もの。世界を崩壊させて文明滅亡に追いやった宇宙から来た植物(高さ600フィートの大木)がいたるところにはびこる中、その中で混乱しつつも、なんとか生きていこうとする人々を描いている。設定こそSFだが、立派な人間ドラマである。だから、子供だった夢男には全くおもしろいとは思えなかったのだろう。


そんなこともあって、書店でトーマス・M・ディッシュの名を見つけて思わず手にとった『いさましいちびのトースター』は、本当に癒してくれる物語。子供に読んで聞かせてもいいぐらい。連日の除雪の疲れが少しとれたようだ。おすすめ!