Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

嘘つきアーニャの真っ赤な真実

米原万里のドキュメンタリー作品。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

1960年、マリはプラハソビエト学校で多感な時期を過ごした。表題のアーニャ、リッツァ、ヤスミンカはその時の同級生。それぞれ、個性的な友達だ。独特な感性のマリとその友人との交流。そして別れ。日本に帰ったマリとの文通もいつしか途絶える。そしてソ連崩壊とともに訪れる激動の東欧*1。そんな中、マリは級友を探して、かつて住んだプラハブカレストベオグラードの地に立つ。マリは級友に会えるのか。そこには、少女時代には知り得なかった「真実」があった。


現地に暮らした筆者にしかわからない「本当のこと」。いろんな主義も主張も世の中にはあふれているわけで、何がいいのかわからないのが正直なところ。でも、この作品を読んで気付いたのは、家族への愛であふれている、ということ。娘から見た父親の姿が描かれているが、同じく娘を持つ夢男は、娘が年頃になったら、どんな父親として見られるのか、これから気を引き締めなければならない、と思ってしまった。娘が一人悩んだとき、父親の姿が一つの解になれるのかどうか。そのことこそ、父親としての力量なのでしょう。

*1:筆者によるとよくいう「東欧」というくくりは、必ずしも的を得ていないという。少なくとも現地の人たちの意識は。