米原万里のドキュメンタリー作品。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
- 作者: 米原万里
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2004/06/25
- メディア: 文庫
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1960年、マリはプラハのソビエト学校で多感な時期を過ごした。表題のアーニャ、リッツァ、ヤスミンカはその時の同級生。それぞれ、個性的な友達だ。独特な感性のマリとその友人との交流。そして別れ。日本に帰ったマリとの文通もいつしか途絶える。そしてソ連崩壊とともに訪れる激動の東欧*1。そんな中、マリは級友を探して、かつて住んだプラハ、ブカレスト、ベオグラードの地に立つ。マリは級友に会えるのか。そこには、少女時代には知り得なかった「真実」があった。
現地に暮らした筆者にしかわからない「本当のこと」。いろんな主義も主張も世の中にはあふれているわけで、何がいいのかわからないのが正直なところ。でも、この作品を読んで気付いたのは、家族への愛であふれている、ということ。娘から見た父親の姿が描かれているが、同じく娘を持つ夢男は、娘が年頃になったら、どんな父親として見られるのか、これから気を引き締めなければならない、と思ってしまった。娘が一人悩んだとき、父親の姿が一つの解になれるのかどうか。そのことこそ、父親としての力量なのでしょう。
*1:筆者によるとよくいう「東欧」というくくりは、必ずしも的を得ていないという。少なくとも現地の人たちの意識は。