Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

携帯電話で思うこと

 やっとバイトが終わった。某大手宅配業者での荷物を発送処理する仕事だ。毎日夕方の2〜3時間、その日発送する荷物を処理すれば終わり。このバイトはもう5年目。毎年、ハウスキュウリの片付けにめどがつくと、年末までの繁忙期のみ行くことが恒例となっている。
 夢男が就農したときの決意に「兼業はしない」がある。あくまでも農業一本で食べていく(いきたい)というこだわりがあるからだ。ここでいう兼業というのは、農業の他に何かの勤め(会社)へ出る、ということだ。カレンダーや時間、その他もろもろに縛られたサラリーマン生活は十分体験済みなので、せっかく農業をしているのに再びそれらに縛られるのはこりごりなのだ。(もっとも、カレンダーじゃなく、季節、天候、日の入り日の出、年中行事、迷信などに縛られる)
 とはいえ、農業で食っていけないのなら外で働くしかないのも現実。そんなことにならないように日々、頑張っているのだ。
 じゃ、なぜバイトに行っているかというと、単に時間に余裕があるのとお金のため。12月末までの短期間ならば、雪の心配もないし、小遣い程度のお金は稼げる。4年前、キュウリ栽培が不調の年に、少しでも収入の足しにでもと始めた、現在に至るバイトなのだ。そのバイト代は家族の温泉旅行資金となっている。
 バイトに行き出すと外に仕事に行っているということ以上に夢男の生活に変化がある。携帯電話だ。
 実は夢男は携帯電話は持っていない。周りからは「今どき珍しい」「変わってる」といわれるが、基本的に電話は嫌いなのだ。メールはウェブはPCだし、いつも家にいて仕事をしているので2回線ある家の電話で十分間に合う。なので、あえて「電話を携帯」する必要もないわけだ。変人扱いされても、そもそも、安定した収入の公務員をやめて就農したことがおかしいといわれている「変人」なので、いまさら携帯電話ごときで変人扱いされてもびくともしない。
 ところがだ、携帯はバイトで必要なのだ。公衆電話の無い場所での仕事なので、事務所との連絡に不可欠。おととしあたりから会社もドライバーとの連絡に使っていた無線を廃止して、携帯電話を導入した。「連絡に使う携帯の番号教えて」と事務員に聞かれて「持ってない」と通用したのも3年目まで。連絡体制が「携帯」となった昨年からは必要不可欠になったのだ。
 たかがバイトでポリシーを変えるのも癪(嫁さんに言わせると携帯ごときでポリシーと言っていること自体今どき変。でも、その嫁さんもいらないという)なので、買ったのはボーダフォンプリペイド携帯。通話料は高いが、うれしいいことに維持費があまりかからない。携帯に月々払う金がないわけじゃないが、本当に無駄なお金は使いたくない(これって単なるケチなだけ?)。昨年のバイト終了後、子供の付き添いでスキーに行って携帯を壊したが、先日新しいのを買うまで一年間無くても全く困らなかった。そんな程度のものなのである。
 農業をやっていて何がいいかと言えば、畑で誰にも邪魔されずに仕事ができる、ということ。電話が来ても家にいなければ出れないのは当たり前だし、大事な用件なら呼びに来るし、それとも後で電話すればいいだけ。そもそも、畑ですぐに話さなければならないほど重要なことなんてほとんどないはず。会社と違い、多くの人と会う職場じゃないから、逆に電話じゃなくて会って話をする方がすごくうれしいし、価値があると思う。農業って、ホントはそんな仕事のはずである。だから、やりたかったのだ。これって、やっぱり変!?

 でも、毎年バイトが終わると、農業をしていることの喜びをあらためて感じるのだ。年末の唯一の他所での仕事は、家族の喜びのためのお金を与えてくれるとともに、夢男に来年の農作業に向けてのやる気を呼び起こしてくれるのである。