Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

大いなる西部

BS録画(TV、LD、ビデオ含めて10回以上観てる)、☆5

東部からテキサスにやってきたジム・マッケイ(グレゴリー・ペック)。目的は地元の大牧場主テリル少佐の一人娘パット(キャロル・ベイカー)と結婚するため。来て早々、ジムとパットは、テリル少佐と水源"ビッグマディ"を巡って対立するヘネシー家の長男バック(チャック・コナーズ)たちに絡まれ、それがもとでいっそう対立が激化。ジムは次第に西部の枠から抜け出せないパットと心のすれ違いに気づく。パットとは対照的な友人、両家の平和を願う"ビックマディ"のオーナー学校教師ジュリー(ジーン・シモンズ)やテリル少佐の片腕でパットに思いを寄せる牧童頭リーチ(チャールトン・ヘストン)。そんなそれぞれの想いのの中で、テリル家とヘネシー家は…。

テーマ曲があまりにも有名な巨匠ウィリアム・ワイラー監督作品。西部劇は基本的にそれほど好きじゃないのだが、西部時代後期を描いたこの作品は西部劇の枠に収まらない骨太の人間ドラマ。誠実そのもののグレゴリー・ペックと西部の掟がすべてのチャールトン・ヘストン。勝ち気で父親そっくりの娘キャロル・ベイカーと人への思いやりがある学校教師ジーン・シモンズ。時代の変化に取り残されつつある両家の主人。明確な対立軸があって、複雑な話なのに非常にわかりやすい。

この映画を観て何を驚くかと言えば、スクリーンの中の西部世界の"広さ"。とにかく広い。オープニングで駅馬車が街にやってくるところが延々と映されるが、画面を横切るのに何秒もかかる。また、馬に乗った牧童たちがスクリーンの向こうからやって来る場面、こちらから向こうに消える場面、どちらも点になるまで時間がかかる。それだけ広い場所で、省略しないでずっと撮影しているということだ。このような時間的空間的広さを観ている間に感じさせた映画は、「アラビアのロレンス」でオマー・シャリフが砂漠の向こうから馬に乗ってやってくるぐらいしか覚えていない。よくある空撮とも違うのだな、これが。ペックとヘストンが明け方早くに殴り合う場面。向うには西部の山々。延々、ずっと殴り合いの場面…。そんな風景にも、言葉少なく、わかり合う男の友情にもグッとくる。

とにかく誠実なマッケイ。頑固一徹テリル少佐*1。主人の少佐の間違いに気づきつつも従うリーチの忠実さ。一見、がさつなヘネシー家長の紳士的態度。弱虫で父に認められたかったヘネシー家の長男バック。テリル家のメキシコ人の召使いラモンの人の良さ。対照的美人のパットとジュリー。

とにかく、大西部の風景に負けないぐらい人々の個性のある人間ドラマ。それがこの「大いなる西部」。長時間でも絶対に飽きないおもしろい映画です。

*1:この頑固さは「酒とバラの日々」のジャック・レモンの妻の父役の彼もそう。