Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

レスラー

DVDレンタル(初見)、☆4

プロレスラーの悲哀を描いたミッキーローク、渾身の一作。
かつて人気プロレスラーだったランディ(ミッキー・ローク)は、過去の栄光だけの老プロレスラー。長年のトレーニングと試合で体はぼろぼろ。トレーラーハウスを間借りしているただの寂しい独り身の男。家族を顧みなかったこともあって、一人娘とは疎遠になっている。行きつけのストリップ・バーに気になる踊り子のパム(マリサ・トメイ)がいるが、お互いに好意を持ちつつも距離を置いている。ある試合のあと、ランディは控え室で倒れる。以前、心臓のバイパス手術を受けたことがあり、その発作だった。医者のストップがかかり、娘のことも気になることもあって、ようやく引退を決意する。そして…

人のよいランディの生活が、淡々とドキュメンタリー・タッチで描かれる。映画が始まるとすぐランディがかつて人気レスラーだったこと、そして、その人の良さとダメさ加減が観客は最初からわかってしまう仕掛け。マリサ・トメイの店で絡む客にキレるところなんて、ああっ、やっちゃったと声が出てしまうぐらい…ダメダメな行動。娘と会うエピソードなんて、うちにも娘がいるので想像しただけで、これまた切なくなる。ダメ親父に対して「見てられない」の切なさだ。金はない。耐力も限界。いつ心臓が壊れるかわからない身…。
この映画で好きな場面。娘のためにプレゼントをマリサ・トメイに選んでもらうくだり。同じ女で若い娘の好みがわかるパムは、プレゼントに季節にあったピーコートを選ぶ。ところが、ダメ親父ミッキー・ロークが選んだのは、娘のイニシャルSと入った黄緑色のシャツ。センスの悪さ全開。どうかと聞かれたパムも言いづらそうにしつつも「第一印象がいいんじゃない」と肯定。渡したら娘の反応は案の定、パムの正解。ここでも、ダメ親父。切なくなってみてられない。結果として、このプレゼントが効いて、娘との和解となるが…また、いろいろと起こる。これ以上は切なくて書けない(笑)。

男ならば、ダメ親父の気持ちがわかる映画。女だったら、男のダメさがはっきりとわかる映画。マリサ・トメイの行動こそ、観客の女性を代弁してると思う。あるいは、女にあきれかえられても男はロマンを追う。それが言いたかったのじゃないかな、この映画は。そんな、意味でも切なくて最後まで見てられない映画だ。

エンゼル・ハート」とか「蘭の女」を知ってるだけに、ミッキー・ロークの変貌には驚いた。映画を観てて、どうしてもランディとミッキー・ロークがオーバー・ラップしてしまう。また、あの「忘れられない人」のマリサ・トメイがストリッパーを演じることへの驚き。でも「いとこのビニー」や「その土曜日、7時58分」でもそうだけど、ダメな男に惚れてる役が多いんだな、実は彼女は…。まあ、それはファンとして、ダメ男の一員としてうれしいことでもある(笑)。

劇中、ランディがパムの息子にあげた自分のフィギュア。パムも観客も息子はそれを喜ばないと思ったはず。ところが、息子ちゃんはお気に入りで、自分のロボット一緒に戦わせて遊んでた。この映画の唯一のランディの勝利。その遊び方は、私、夢男の息子のお気に入りの遊び方と一緒。男心そのものだ。
この息子ちゃんの場面で、私はダメ親父のささやかな勝利を確信したのである。

レスラー スペシャル・エディション [DVD]

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