Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

「単騎、千里を走る。」その2

嫁さんと、以前、このブログにも書いた高倉健主演の「単騎、千里を走る。」を見に行った。二人で映画を見るのは久しぶり。近くに映画館がないことや、一番下の子がまだ小さいので家族みんなで映画鑑賞というわけにもいかないからだ。第一、子連れだとかなり見る映画が限られてしまう。家でアニメのビデオを見た方が大人も子供たちも楽しめるだろう。実は嫁さんとは、ずっと遠距離恋愛だったこともあって、映画は結婚前でもそんなに一緒に見てはいない。覚えているところでは、トム・ハンクスの「アポロ13」、ジャック・ニコルソン「ウルフ」、メル・ギブスン「マーベリック」ぐらいか。ほかにもあったような気がするのだけれど・・・。この「前に見た映画」の話が非常に危険。いろいろとごっちゃになっているから注意しないと。一歩間違うと喧嘩になってしまう(笑)。


さて、肝心の「単騎、千里を走る。」だが、予想どおりすばらしい映画だった。"健さん"の"じっと耐える男"の演技がいまでも健在なのが、なんだかうれしかった。この作品は204本目の出演作品ということだが、今まで見た"健さん映画"を思い出してみると、「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」「冬の華」「野性の証明」「新幹線大爆破」「動乱」といったところ。「網走番外地」シリーズは見てない。
今回の「かつて家庭を顧みずに仕事一筋のサラリーマンで妻を亡くしてから、そのことで息子との軋轢がある漁師」*1(一部想像)を演じる高倉健は、決して以前からのファンの期待を裏切らない。監督のチャン・イーモウ自身、健さんのファンで、彼の主演で何か映画を撮ること自体が目的だったという。そのためのオリジナルの脚本だそうだ*2。だからどっぷり「高倉健」でいいのである。
映画については見てもらうしか、その感動を伝えることはできないので省略する。中国・雲南省の風景がとてもすばらしい。高倉健が子供と道に迷う「土柱の谷」の奇観はめったにカメラが入るところではないらしい。登場する雲南の人々の気持ちが美しい*3。この映画を見たあと、同監督の過去作「初恋のきた道」をビデオで見た*4が、それが彼の持ち味なのだろうと確信した。国の違いは関係なく、共感できる人の気持ちこそ、彼の映画にとって重要なものなのだろう。「単騎、千里を走る。」はまったくの「父と息子」の映画であった。


劇場のチケット売り場は若い人から年配までいっぱいだった。でも、「単騎、・・・」のスクリーンの前に座ったら、自分たち以外は60才以上のおじさんおばさんばっかり。夢男はこの「父と息子」の映画に満足したが、母親である夢男の嫁さんは少しもの足りなかったらしい。同じ子供が出てくる映画ならば、むしろ話題の「オリバー・ツイスト」もよかったのかもしれない。実際、売り場に並んでいた若い女性たちは「オリバー・・・」を選んでいた人がほとんど。夢男の感覚が思った以上に「おじんくさい」ことがわかった今回の映画鑑賞でした。(笑)

*1:映画ではそこまで言ってない。彼の住む小屋の書斎の本棚と椅子からそう思われた。根っからの漁師というわけではないようだ

*2:キネマ旬報・1月上旬新春号、インタービュー記事

*3:出演者は高倉健以外、全員素人だそうだ。1回の撮影に50回のNGはあたりまえだったらしい

*4:チャン・ツィイーの目で表された恋心に圧倒された。台詞が少なくても気持ちが良く伝わるというのは「単騎、・・・」も一緒ですね