Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

鶴岡に行ったこと

 昨年12月に新庄市から最上川沿いに車を走らせる機会があった。その日はとても天気がよく、みぞれまじりだった一年前の道中に比べると天国のようなドライブだった。
 30分ほど走らせると戸沢村から庄内町に抜ける辺りに対岸に白糸の滝が見えてくる。白糸の滝は珍しくないのだけど珍しいのがこちら側にある「パーラー白糸の滝」なのだ。今度通ったら絶対に行こうと決めてた。気になってた場所だけに先は急がない今回の旅にはもってこい。

(以下、写真は全て、minolta Hi-Matic 7s , イルフォードXP2 400 C-41現像)

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 お店の階段を上ると全面窓ガラスのパノラマが広がる。うっすらと雪景色。青い空。滝の下に見える赤い鳥居。景色は最高である。昭和チックな店内は明るく、レトロモダンな赤い椅子はとても素敵である。ここにきたらおすすめは「プリンアラモード」である。あのあこがれのプリンアラモード。子供の時に食べたかった大人のためのプリンアラモード。メニューにあるとなれば頼まないわけにはいかないのだ。開店すぐだからか お客は自分たちだけである。パノラマビュー独占なのである。心地よい時間を十分堪能したあと、再訪できることを願いつつお店を後にする。


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 計画的な旅もいいけど、ぶらりとどこに行くでもない旅もいいものだ。今回の旅はまさに後者。こどもの行事のついでという中途半端な時間だけど、実のところは誰かからの思わぬ贈り物なのかもしれない。


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 次に向かったのは鶴岡市の善寶寺(ぜんぽうじ)。かなり前に「人面魚」でニュースをにぎわせた池のある寺である。年末も近かったせいか、初詣での照明でも準備しているのか、いるのは電気工事のひとばかり。以前に子供が訪れたことがあってとてもよかったと言っていたからちょっと期待して行ったのだ。まず、入ってすぐに総門の壮麗さに驚かせられる。他では見たことのないような彫刻なのだ。特に柱の獅子の造形が素晴らしい。今にも動きそう。


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 安政期に建立され総門に対して五重塔は明治期なので新しさが感じられる。四方に神将のレリーフが施されている。この立体感は素晴らしいとしか言いようがない。

 実はこの善寶寺は鶴岡出身の作家、藤沢周平にゆかりのお寺でもある。氏の作品に『龍を見た男』にこの善寶寺が登場するのだ。『龍を見た男』は漁師の源四郎が主人公。ある事件があって夫婦でこの寺にお参りに来るのだ。この寺は龍神信仰の寺だそうで船の安全や大漁を願う人たちの信仰を集めているそうだ。先の池と弥勒菩薩が登場する。小説は動から静で終わる。その描写に僕は葛飾北斎の最後の作品を思い浮かべずにはいられなかった。


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 鶴岡といえば、湯野浜も忘れてはいけない。最近は全くといっていいほど海には行っていないので是非とも行きたいところ。湯野浜温泉も冬の平日だからか人影はあまりない。犬の散歩をしている老人。そしてよちよち歩きの子供を真ん中に砂浜を歩いている若い家族。僕らはサスペンス劇場の中年刑事と容疑者といったところか。いや、冗談!

 と言ってる間に、子供の用事が終わったようでメッセージの着信音が二人の間に割り込んできたのだった。