Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

フィルムへの情熱にジーンときた…『LIFE!/ライフ』

Apple TV(2回目) , ☆5(前回は4だった…。上がった理由は以下に)

LIFE!/ライフ [AmazonDVDコレクション]

 雪が少なくてとてもいい。でも、今年は家には受験生も何人かいるので、そう楽ちんだとばかりも言ってられない。さらに事務仕事もしなくちゃならないわけで…。しか〜し、それはそうであってもそうではないとも言える。
 なぜならば、昨年の農業シーズンから我が社では『積極的農閑期遊興主義』を取り入れたのだ。現在、これを実践するのは僕と妻のみ。要は、

「死ぬほど忙しくしても楽しいことがなくては農業というものはとてもじゃないが頑張れないので隙あらば遊ぼう!」
(時間と機会は必要なときこそ失われるものなのだ。夢男談)

ということである。誠に勝手な言い分もなきにしもあらずではあるが、そんなわけで、今シーズンはささやかではありますがわりと二人で遊んでいる農閑期なのだ。

 で、前置きが長くなったけど、雪降る寒い中、コタツに入って見た今回の映画『LIFE!/ライフ』。ベン・スティラー主演の元気映画。舞台は『Time』に経営統合された伝統的フォトグラフ雑誌『LIFE』。トラブルに巻き込まれたネガ管理担当のベン・スティラーの愛と冒険の物語。とても素晴らしい。美しい!二年前に簡単にブログに感想書いてた。

ftalkpop.hateblo.jp

 今回の『LIFE!/ライフ』。二年前には評価は☆4で、これは僕の評価としてはかなり良いのだけれど、今回はさらによかった。これは☆5だわ…。どうも前回と見方が少し違ったのだ。見方が変わったのは、僕がフィルム撮影をするようになったからだ。

 ブログを読んでる人はわかると思うけど、ここんとこ、一年ちょっと前から国産の古いフィルムカメラで写真を撮ることが楽しみになっている。若い子の間で"チェキ"とか"写ルンです"が流行っているそうなんだけど、僕がフィルム撮影に興味を持ったのはそれとはちょっと違う流れ。そりゃそうだ。だって僕はおっさんだもの。
 前にも書いたかもしれないけど、その僕が勝手にZ先生と呼ばせてもらっている、50年以上前の古いカメラを手入れして使ったり、時にはジャンクから取った部品をニコイチして生まれ変わらせているフィルム撮影の伝道師がいる(これも勝手に呼ばせてもらっている)。その先生の書いているブログ「照片画廊」がとても素敵で、まるで何かの魔法にでもかかったようにフィルム撮影がしたくなったのだ。
 
 今のデジカメは本当に良く写る。簡単にきれいな写真が撮れるから本当に便利だ。そこそこ性能のでも良く写る。でも、スマホで写真を撮るようになってだんだんとデジカメを使わなくなってきたのだよね。撮ってて何かが足りない。きれいに撮れるのにね。対してスマホは割と楽しい。ほんと、これって、なんなのだろう。
 一方でフィルムで撮る写真はさらに楽しいのだ。何かわかんないけどすごく楽しい。お金も余計にかかっていちいち面倒くさくもあるのにだ。フィルムの選択、撮影場所でのシャッタースピードや露出値の設定。二重像合致でピントも合わせるのが大変だ。もたもたするのだ。失敗するとフィルムがとてももったいないと気にするのも昔から同じだ。撮った後もラボに出さなきゃいけない。そもそも、プリントが手元に来ないときれいに写っているのかもわからない。失敗してもあとの祭り。デジカメが出たとき何が気に入ったかって、そういうフィルムカメラの問題点が解消されて写真を自由に撮ることが出来たからだ。でも、便利さと楽しさはちょうど逆になったのだよね。
 
 『LIFE!/ライフ』で描かれている報道写真の世界、ベン・スティラー演じるウォルターの仕事への気持ち、ショーン・ペン演じるカメラマンのショーンの被写体に対する姿勢、『LIFE』誌のスローガン(下記引用参照)がとても心に残る。この映画ではネガが重要なキーワードになるのだけど、僕はそのネガを実際に自分で扱うようになって、登場人物たちの思いにちょっとだけ近づけたような気になった。

 ウォルターはネガを探しに「トム少佐」に後押しされてヘリコプターに飛び乗る。デジカメの写真データと違い、ネガはそれが存在する場所に取りに行かなくてはならないのだ。その存在するもののためにウォルターは旅立ち、形にはできないものを得る。

世界を見よう
危険でも立ち向かおう
壁の裏側を覗こう
もっと近づこう
もっとお互いを知ろう
そして感じよう
それが人生の目的だから

To see the world, Things dangerous to come to,
To see behind walls, To draw closer, To find each other and to feel.
This is the purpose of life.

(映画より。「LIFE社のスローガン」)

 フィルム撮影は一枚一枚の写真をじっくりと撮って、その瞬間の光を焼き付ける。撮影に成功しても失敗してもそこに確かに残る。残り続ける。

 僕は農家で、農産物を生産するとは言っても、その生産のためとは言ってもかなり消費も多い。そんな矛盾もかかえながら消費し生産し続けることにいささか疲れてきた。そんな心境の変化に古いカメラでフィルム写真を撮ることがすっと入り込んできたのだと思う。

 さて、僕はこれから確かなもの、あるいは何か形にならないものを残せるのだろうか。

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