Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

砂の器

  • TVドラマ(2011版、初見)、☆4(昭和の風俗がよく描かれているので)

  • 映画版DVD(2回)、☆5

砂の器 デジタルリマスター2005 [Blu-ray]

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あまりにも有名な松本清張原作の5度目の映像化。玉木宏主演。前編後編の二夜連続放映。
で、ドラマ版の感想。まずキャストについて。映画では森田健作丹波哲郎が演じていた吉村、今西の二人の刑事役はそれぞれ、玉木宏小林薫加藤剛の和賀英良は、佐々木蔵之介。和賀英良の育ての父の三木謙一は橋爪功(映画は緒形拳)。実の父、本浦千代吉は山本學(映画・加藤嘉)。ここまでの配役は文句なし。これ以外もベテランがちょい役で出てたりと映画に劣らず。最近の軽いドラマとは違い、かなり豪華な配役で見応え十分。
不満な点。映画にはなかった玉木・吉村刑事の女友達、中谷美紀演じる女性新聞記者・山下がうるさいほどストーリーに絡んできた。本当だったら、二人の刑事の地道な努力で事件の真相に迫るはずなのだが、謎解きの場面になると中谷美紀が謎を解いて二人の刑事にアドバイスするという、お前は名探偵コナンか(笑)、という突っ込みを入れたくなるほどのおせっかい女状態。中谷美紀は昭和のすごくオシャレな服装で綺麗なだけに、この設定は主役は彼女としか言いようがない。玉木・吉村刑事が熱演だけに少し残念。「砂の器」としてみなければ、ドラマとしてかなりおもしろい設定ではある。あと気になったのが劇中のナレーション。事件は舞台と年代が幅広く変わる複雑な事件だけに説明されないとわかりづらいとは思うが、まるで監督の意図に反して挿入された「ブレードランナー」のデッカードのモノローグと同じ。あればあったでわかりやすいが、ドラマの雰囲気に浸るには…。ちょっと蛇足か。しゃべっている三上博史はうまかったけどね。あと、佐々木・和賀英良がちょっと熱演すぎるのと玉木のヘアスタイルというか、その人が一人だけ昭和から浮いてた。いい男すぎて(笑)。とはいうものの、玉木宏佐々木蔵之介中谷美紀に関しては、放送後のtwitter上の感想を読む限りでは絶賛の声が多かった。特に女性。今や、オッサンはお呼びでないらしい。
前回、SMAPの中居主演でドラマ化の「砂の器」も犯人の動機は原作、映画から変更されていたようだが、確かに物語上、非常に重要なことではあるが、この物語に重要なのは「親子愛」だと思う。動機はともあれ、映画もドラマも一緒に子供と暮らせなかった実の父、本浦千代吉と育ての父、三木謙一の子供に対する愛がポイントだと思う。この視点で見ると、今回のドラマは、玉木演じる吉村の子供時代と佐々木・和賀英良の共通の想い「孤独」が重要視されていたと思う。そのため、描かれた親子愛が少し薄れてしまったのではないか。
映画版「砂の器」のハイライトは、丹波・今西刑事が事件の全容を会議で皆に説明する場面(平行して、全国を放浪するお遍路、本浦親子の苦難の旅。加藤剛の指揮、オーケストラ演奏「宿命」が演奏場面が挿入される。その時間30分以上。涙が止まらなかった)。今回の謎解きは取調室で、あっという間に、旅のシーンも短く終わってしまった。なので、自分を含めた映画版を見た人には不完全燃焼感があったかもしれない。しかし、その言わんとすべきことは伝わった。
差別するとか差別されるとかは、非常に悲しくもあり不幸な、そして本当に人として許されるべきではない重要な問題。しかし、如何せん、その当事者にならないと傍観者で終わってしまいがち。「砂の器」のような物語は、そのときの社会情勢で扱いは非常に難しいのだろう。しかし、その根底に流れる時代や場所、人に左右されない"ひと"としての不変の想い、親子愛は変わらない。それを皆に思い出させてくれるのが「砂の器」という物語なのだと思う。
iTunesでダウンロードした "松竹映画『砂の器サウンドトラックよりピアノと管弦楽のための組曲「宿命」" を聞きながら、この記事を書いていると、本浦親子の困難であった旅。しかし、それは二人だけの時間。あの旅の風景を思い出して、また涙が出てきた。

砂の器 サウンドトラックより ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」

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砂の器〈上〉 (新潮文庫)

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砂の器〈下〉 (新潮文庫)

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