Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

めぐりあう時間たち

BS録画(初見)、☆4

ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』を軸に、三つの時代の3人の女性のそれぞれの一日を描いた映画。
ヴァージニア・ウルフニコール・キッドマン)、いわれなければ彼女だとわからない特殊メーキャップでウルフになりきった演技。アメリカの新興住宅地で平凡に暮らす主婦のローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)、心の動きがすべて顔の表情であらわされる繊細な演技。編集者のクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)、感情の起伏を身体全体で力強く表現している。圧巻としかいいようのない3人の女優の演技バトル。
内容は暗く、明るい未来はない映画。また、女性の繊細な心の動きを描いた映画だけに男性としてはまるで狐につままれたような気持ちになってしまう映画。でも、見終わった後に深く心に残る。
この映画に出てくる人たちの心情としては、ウルフの夫とか、ローラの夫や息子、クラリッサの元恋人リチャード(エド・ハリス)の方がよくわかる気がする。そう、女に置いて行かれた側の男の気持ちだ。特にリチャード少年、母が離れるかもしれない男の子の心配。あれほどまで「男」の気持ちを代弁しているものはない。大人になっても子供でも、男の根底にある気持ちではないかとも思うのだ。そこが男の弱さだ。
何でこんなに男の心情を現せるのかと思ってたら、監督は「リトル・ダンサー」(☆5)、「愛を読むひと」(☆4)のスティーヴン・ダルドリー。当然だと思った。どちらも男側を深く描いた映画だ。いずれの映画も幸せな男女を描いてない。でも愛がないわけじゃない。どの映画には深い愛があふれてる。
この映画でジュリアン・ムーアの評価が変わった。これまではちょっと苦手だった彼女。また、派手さは全くなく、素顔を隠したニコール・キッドマンの真の力。安定した定番の演技のメリル・ストリープエド・ハリスも熱演だが、女優パワーはそれ以上にもっとすごかったのだ。
この映画は絶対に「息子を持った母」が観たら、間違いなく撃沈される映画。すごく急所を突いてくる。一方で「女に負けた」と思った映画…。
ローラが息子のリチャードと作る夫のための青い誕生日ケーキがいつまでも記憶に残る。

めぐりあう時間たち [DVD]

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