Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

本当に大切なものを無くした… 「砂と霧の家」

砂と霧の家

BS録画(初見)、☆2(俳優の演技力がどうのこうのの問題じゃない!)

ジェニファー・コネリーベン・キングスレー主演。
税金の滞納で家を役所に押さえられたキャシー(J・コネリー)。その家をアメリカに亡命した元大佐のベラーニ(B・キングスレー)一家が購入した。実はそれは手違いだったのだが、とき既に遅し。ベラーニ大佐はアメリカでの妻と息子との生活を確かなものにすべく、投資目的で購入したのだった。キャシーの買い戻しの申し出に断固として耳を貸さないベラーニ。キャシーの苦境に暑気の手をさしのべたのが元恋人の警官レスター。海辺の家を取り巻く人たち…。彼らに全員に思わぬ運命が降りかかる…。

亡命軍人のベラーニは息子を愛している。妻を愛している。しかし、彼のプライドが家族に対してなかなか素直になれない。見えないこれからの生活展望に家族が再出発するには、この海が見える家(故国イランのカスピ海に面した別荘に似てる)が必要だったのだ。家長として、家族の幸せのために元軍人は屈辱的な仕事をやる。わかる気がする…。私も同じ父という立場だ!
その意味では、キャシーも父の遺したこの家は家族の思い出のなくてはならないもの。それはわかる。わからないのが、キャシーの元恋人のレスターが家族を捨て、キャシーとやり直す決心をすること(その点は信じられないほどの突然の変わり身で納得がいかないの。でも、きっと昔の彼女との思い出が忘れられなかったのでしょう…)。

こんな感じで淡々と映画の序盤から悲劇を予想させる展開が続く。気が重くなった…。観ても観ても、いつまでたっても映画の中は幸せにならない…。ヒロインのキャシー、あの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の美少女ジェニファー・コネリーが夫と別れて、お金に苦労するモーテル暮らしの姿がイタすぎ。だって、私の高校時代の美人女優の落ちぶれた姿だもの…(あくまでも劇中でなのだが、あまりにはまりすぎていてショック…)。
一方の「ガンジー」ベン・キングスレーの重厚な演技も、物語の展開に暗雲が広がりそうなのが予想できて、ますます、ドヨーンとなったのだった。彼と妻役のショーレ・アグダシュルーはアカデミー賞ノミネートだって。迫真の演技はすばらしい。でも、それゆえにますます気分は盛り下がる…。

この映画に出てくる人たちは、とにかく幸せのために「家」にこだわっている。でも向かうのは、だんだんとした不幸。物質的な欲望が最も大切な何かを忘れさせようとしている。そして、ドヨーンと物語に終幕が降りる。

この映画、きっと二度と観ないでしょう…。映画ってものは最後に救いがなくちゃ…。