Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

キプールの記憶 -No.7 -p916

BS-TBS録画(だったかな?ちょっと前。初見)、☆4

映画の舞台はイスラエル。部隊と合流するためにゴラン高原へ向かった友人二人。本来の自分たちの部隊には戻れず、ヘリの医療部隊に加わることになった。そこで体験するのはあくまでも人力での過酷な負傷者救出の現場。終わりのない作業をひたすら続けるのだった。ところが…。
フランス・イスラエルの合作映画。戦闘で負傷した兵士を救出の模様をひたすら映し続ける。物語らしい物語はない。まるでドキュメンタリー映画を観ているよう。
最も印象的な場面、戦車がやっと走れるぐらいの泥土地帯での救出。股までぬかるような足元の悪いドロドロの地面の中、主人公たちは担架で負傷者を運ぶ。みんなで前に進むと一人の足が泥から抜けない。ぬかった人を助けるために担架をおいて足を抜くのを手伝う。すると手伝った人がぬかる。ようやく皆動けるようになって持ち場について出発しようとするとまた別な人の足が抜けない。運ぶ人も負傷兵士も担架から落ちてドロドロ。雨も降っている。これを延々、映す…。自分は農家でドロドロは慣れているが、これだけのものは体験しなくてもその過酷さはよくわかる。無情と言ってもいい。戦争負傷者の収容という終わりのない作業をこれほどまでに象徴的にあらわしたものはない!


「笑ってしまうくらい恐ろしいこの瞬間に、観客は骨の髄まで戦争の怖さを知る。個人的にも宇宙規模でも、現実的にもシュールレアリズム的にも。(RP)」(『死ぬまでに観たい映画1001本』)

映画を観ている人は救出作業に参加しているのだ。しかし、それもある出来後で唐突に終わりを迎える…本当にその真っ直中にいたら、どうなるのか。これほどそう思わせた戦争映画はない。


キプール~勝者なき戦場~ [DVD]

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