Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

パピヨン -No.3 -p569

NHK-BS(初見は22年前にLDで。初ボーナスで買ったLDプレーヤーで)、☆5

無実の罪で投獄された胸に蝶の刺青のある男、パピヨンスティーブ・マックイーン演じるパピヨンは、自由を求め脱獄を繰り返す。全編にわたってジェリー・ゴールドスミスのテーマ曲が何とも言えぬ深い味わいを醸し出す。

ずっとマックイーンのファンだったが、他の主演作と違い、この作品はなかなかTVの洋画劇場では放送されなかった。初めて観ることができたのは、就職して初ボーナスで買ったLDプレーヤーで。当時、千葉のパルコで12,800円の2枚組のLDソフトを購入。「ブリット」などが6000円程度で買えた当時、この価格は高い方だったが、内容はそれに値するすばらしい映画だった。

この映画の見所は、なんといってもマックイーンの無言の演技。これまでのかっこいいマックイーンではなく、着ているものはぼろぼろのただの汚い男にしか見えない。何度も脱走し、捕まるたびに長期間、独房に入れられ苦しむが、決して希失わず自由を追い求める。演技派俳優ダスティン・ホフマン演じるドガとの友情。マックイーンは当時、台頭の若手俳優ホフマンにライバル心をむき出し、感情を内に秘めた演技で私たちを圧倒する。

ものの本によると当時、結婚していたアリ・マックグローと子供たちと同行のこの「パピヨン」熱帯ロケで非常に苦労したらしく、その後オファーのあったコッポラ「地獄の黙示録」を降りたらしい。ファンとしては非常に残念なエピソード。映像はその大変さが伝わるスケールの大きなものだ。

ほぼ男しか出てこない暗い映画で最も印象的なキャラクターは、パピヨンを刑務所で独房の2年間+5年間を見守ったというか、監視していた収容所長。2年間の独房懲役後、あっさりと解放したり、5年の独房懲役の後、パピヨン同様白髪頭になり、役務なりの気苦労があることを忍ばせるカットがすごくいい。

ラストのあれは、今回のハイビジョン放送でも健在。とはいえ、そんなことを気にさせないほどの冒険物語。CGで修正できないほど、本物の映画なのだ。

「それでも映画の主張は、幻想の場面に現れている。『おまえの罪は、人生を無駄にしたことだ』とパピヨンはいわれるが、映画はその言葉への反論となる。パピヨンの勝利はごく普通の男が彼を滅ぼそうとするシステムを打ち負かすものだからだ。(GC-Q)」(「死ぬまでに観たい映画1001本」)


不屈の精神。男に必要なものをマックイーン演じるパピヨンは教えてくれた。