Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

布団の中で、荒野を越えて国境を越えて…

実はちょっと前に数年ぶりのひどいぎっくり腰になってしまい、数日寝込んだ。ぎっくり腰の直後はどうにもこうにも全く動けず、動けるようになっても四つん這いでトイレに行く始末。まあ、もう何回目かのぎっくり腰だから、この後回復するのは間違いないことはわかっていたけどね。そして1週間になろうとしている今、ようやく良くなって椅子に座ることができたので、これまた久しぶりにブログを書いている次第。

痛みが無くなっても、腰に負担がかかって起きていられないので、寝てるしかない。そんで寝てる間の暇つぶしに見た映画2本が、なんと偶然にもメキシコとアメリカの国境を舞台にした映画だった。どちらもぎっくり腰のおっさんとは全く状況の正反対の逃避行もの。バイオレンスでアクションで荒野(砂漠)に逃げるのである。どちらの映画も健康体で見たのなら、なんだこれ、ともいえる映画なのかもしれないが、自分のおかれた状況が状況だけに予備知識なし期待なしで見たらとても面白かったのである。


ノー・エスケープ 自由への国境 [DVD]

「ノー・エスケープ 自由への国境」
Apple TV(初見)、☆3.5

トランプ大統領になってから不法移民を防ぐためにメキシコとの国境に壁を作ると強弁しているが、そのメキシコからの密入国を描いた映画。監督は「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロンの息子ホナス・キュアロン。「ゼロ・グラビティ」は映画館で観てとてもよかったので、自ずと期待は高まる。主役は「天国の口、終りの楽園。」「モーターサイクル・ダイアリーズ」のお気に入りの俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルだ。この映画の存在を知ってから、絶対に損はしない映画だからとなるべくネタバレしないように情報を制限してた。その甲斐あって今回の視聴となったのだ。おまけに現在人気のお気に入りのTVシリーズウォーキング・デッド」のニーガンこと、ジェフリー・ディーン・モーガンが不法移民を追う男を演じてることは映画を見てから知ったのでさらに驚いたのなんのって。この映画でもいい味出してます。

さて、肝心の映画の出来はいいと思う。何せ、メキシコとアメリカ国境の砂漠の画がとても美しい。殺風景なのに美しい荒野の中で不法移民たちが何者かに銃撃されるのだ。ストーリーは誰が銃撃しているのか最初からわかっているので、予想どおりに映画は進む。名前はわからないけど訳ありでライフルを撃っている銃撃者のニーガンさん(名前がないので取りあえず「ウォーキング・デッド」と同じくこう呼ばせてもらう)。「ウォーキング・デッド」の彼の役と同じで悪いやつなのに魅力的に描かれている。彼の犬の「トラッカー」君もやっていること(不法移民を噛み殺しまくり)に比べて割とかわいく思える。そう思えるのも「ウォーキング・デッド」なんてゾンビものを見ているからだ。ゾンビに比べれば映画で人のやることなんか想像が付く。追われているガエル・ガルシアが魅力的なのも追跡ものとしてはとてもよろしい。

見終わってからネットをググって各種批評を読んでみると賛否両論。すごくいいっていうのと駄作だ、キュアロン息子ダメだとか。ドリフの「8時だヨ!全員集合」と同じようなもんのただの追いかけっこだとか。確かに見方によってはそう見えるかもしれない。でも、ぎっくり腰の僕にはとてもそうは思えないいい映画だったのだ。

とにかく砂漠が美しい。追跡されるガエル・ガルシア・ベルナルと追跡するニーガンさんをドキュメンタリー映画のように描いてる。映画だから何かの小道具があって劇的な展開で劇的に終わるのが映画的だとは思うけども、この映画はそういうことは無い。逆に劇的な展開がありすぎたら、映画っぽくて逆に引いてしまいそう。そんな意味で自分の中の逃避行追跡映画のベスト3入り決定!


フロム・ダスク・ティル・ドーン (字幕版)

フロム・ダスク・ティル・ドーン
Hulu(初見)、☆3.5

タランティーノ監督の盟友、ロバート・ロドリゲス監督作品。まだぱっとしてない頃の若々しいジョージ・クルーニーが兄で、これまた若々しいタランティーノが弟の銀行強盗兄弟。銀行強盗して逃げる途中でハーヴェイ・カイテル父とジュリエット・ルイス娘とその弟の家族を人質にする。で、エルパソからメキシコに国境を超えて逃げるという犯罪者お決まりの逃避行となる。

国境を越えてメキシコに行くというとスティーブ・マックイーンの「ゲッタウェイ」な訳で、これについて書くとごはん百杯は食べられるぐらい書きたいことがあるので、ここでは省略とする(笑)

ルーニー始め、タランティーノカイテルジュリエット・ルイスもとても若く、見ていて気持ちいい。その若い彼らがタランティーノ映画によくあるバイオレンスなドラマを進めるのだが、タランティーノ映画を何本か見た僕からしてみれば、そうそう、この感じ、これからが楽しみ!ということで物語が気持ちよく進んでいく。細かいところにこだわった隙の無い犯罪映画だ。こっちはぎっくり腰で動けないのだから、国境を越えて逃げるなんていうと俺も連れてってくれ!状態になる。

ところが、国境を越えて取引相手と落ち合う約束のクルーニータランティーノ兄弟とカイテル家族が「おっ○い…なんとか」という飲み屋に着いたところから映画の雰囲気が変わる。前半が「パルプ・フィクション」風とすると後半は「プラネット・テラー in グラインドハウス 」のようなホラー色になってしまうのだ。これまた若いダニー・トレホとかやたらマッチョな男たちとセクシーダンサーのオンパレード。しまいには妖艶サルマ・ハエックの足からしたたるお酒を飲むタランティーノ御大のお姿まで拝める。やっぱり、噂どおりの足フェチだったのだ…。まあ、なんだかんだで大団円で終わるのだが、ラストがまさにメキシコ! 嫌いじゃないんだなあ、こういうの♪

一方はメキシコからアメリカを目指し、一方はアメリカからメキシコを目指す。このシチュエーションの映画は数多くあると思うのだけど、この2本は良かった。そう思わせたのは、ぎっくり腰で動けなかった、自由を奪われた状況だったからなのかもしれない。自由はいつもそこにあるわけではないのだ。