Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

パリ、少年時代、感情の起伏… 「大人は判ってくれない」

大人は判ってくれない No.15 p360

BS録画(初見)、☆4
アントワーヌ(ジャン=ピエール・レオ)は男子校に通う少年。母は彼を連れて今の父と再婚。共稼ぎで共に少年をかまってくれない。学校では落ちこぼれのアントワーヌ。楽しいのは悪友と一緒に学校をサボって映画を観たり、酒を飲んだり、タバコを吸ったり。でも、愛されたい彼。ある時、作文の授業でバルザックを盗作したと叱られ、学校を飛び出す。家にもいたくない。彼はどこへ行ったらいいのか…

あの「未知との遭遇」の博士役で印象的な「華氏451」のフランソワ・トリュフォーの監督デビュー作。全編モノクロ。印象的な音楽。昔のパリの町並み。走っている車のレトロ感(当時はごく普通の車たちなのに、今見ると現代の車と違ってとても味がある…。シトロエン2CV、いっぱい走ってる…)。どれも雰囲気があって素敵です。とまあ、パリには行ったこともないので、映像の雰囲気にひたることしかできないわけですが…。この映画とパリの街との関係はパリ:都市空間が語る「大人は判ってくれない」再考。に詳しく解説されていて、映画の背景についてよくわかります。

劇中で厳しい母親と義理の父が唯一、アントワーヌに優しくなる場面が印象的。です。この全体的に寂しい雰囲気の映画で、逆にそれが違和感…。どんな場面かというと…。アントワーヌ少年は自分の部屋にろうそくを灯してそれが布に燃え移ってしまう。ここで観てる私たちはすごく怒られるぞと思うのですが、両親が実はそれほどの怒りかたでもなく、それどころかそれから皆で映画を観に行くことになってしまいます。映画を観た3人は手を繋いで、みんな笑って本当に楽しそう。映画はこれから彼が幸せになることを暗示してのかと思ってしまいました。ところが…。

車に乗せて連れて行かれる少年の涙…。ちょっと切なくなる映画でした。

アントワーヌは黒のタートルネックのセーターを着ていて、タバコを吸ったりしてとても大人びた少年。子どもの頃、この映画を観たのなら、環境も含めた自分との違いにとても驚いたでしょうね。大人になった今、自分が少年の立場というよりも、息子に対する親の立場で観ていることに逆に驚きました(あたりまえか…笑)。そんな意味でも、この映画に登場する大人は、大人になった私からみても嫌な大人でしたね。

wikiによるとこの映画の原題は"LES QUATRE CENTS COUPS"、直訳すると『400回の殴打』という意味だそうで、邦題の「大人は判ってくれない」は、かなりやわらかめのタイトルです。原題の方が内容をダイレクトに伝えてくれます。でも、これじゃ、何だか怖くて観ないかもしれませんね(笑)

トリュフォーはレオを使って、彼の死の4年前『逃げ去る恋』(1979)まで4本の続編をつくった。これらの続編も魅力的だが、あふれんばかりの創造性に満ちた頃のヌーヴェル・ヴァーグのひとつの結晶である本作品には及ばない。(DS)」(「死ぬまでに観たい映画1001本」より)