Farmer's Talk Pop

キュウリ農家 "夢男"の好きな映画や音楽や・・・

中年は過ぎ去った青春を思い出す… 「ラストショー」

ラストショー -No.13 -p549

BS録画(初見)、☆4
ティモシー・ボトムズジェフ・ブリッジスシビル・シェパード主演の青春映画。ピーター・ボグダノヴィッチ監督。いわゆる「アメリカンニューシネマ」といわれる作品。

舞台はテキサスのさびれた町。高校生のソニー(ボトムズ)とデュエーン(ブリッジス)は親友同士。彼らの興味は女の子のこと。そんな彼らの楽しみは町の唯一の映画館でのデート。そこでソニーは付き合っている彼女に振られるが、デュエーンはジェイシー(シェパード)とうまくいっている。だが彼女の母親に彼が貧乏なことで反対されている。そんな彼らをいつも見守るビリヤード場と映画館を経営するサム(ベン・ジョンソン)。口のきけない息子と仲良くするソニーを実の息子のように思っている。そんな時、ソニーの生活にある出来事が起こる。それを取り巻く人々にも変化が…。

若者を題材にした青春映画だから、本当は高校生とか大学生だった頃にこの映画を観れば、ティモシー・ボトムズ演じるソニーとジェフ・ブリッジス演じるデュエーンに対してかなりの感情移入できたはず…。と思いきや、見終わって驚いたのは、実は中年になった現在でも感情移入できる「中年のための青春映画」でもあったということ。

オスカー俳優のジェフ・ブリッジス、髪のフサフサだった頃のブルース・ウィリスとTVシリーズ「こちらブルームーン探偵社」共演したシビル・シェパードらの若者が輝いているのは青春映画だから当然。驚いたのは、ある中年俳優に…。スティーブ・マックイーンの「ゲッタウェイ」で彼を裏切る悪徳実業家を演じたベン・ジョンソン演じる中年がなんと素敵なこと。「ゲッタウェイ」の悪徳ぶりが印象深くて、これまで悪徳=ベン・ジョンソンと同義だと思っていただけに、この「ラストショー」でその印象は払拭された。

劇中、ベン・ジョンソン演じるサムは息子とソニーと一緒に亀しかいない河へ釣りに行く。そこでサムはソニーに、好きな女と結婚するということ、夫婦でいるということの意味を語る。魚を釣りたいからそこに行くのではなく、自分が若かった頃、好きな女と裸になって二人で泳いだ場所で思い出に浸りたかったからのだ。それを語るサムの表情。好きな女といる時間は本当に幸せなだったのだ。それを聞いたソニーはわかったようなよくわからないような表情…。でも、この映画を観ていた中年、わたくし「夢男」にはそれがよくわかった…。

ベン・ジョンソン以外にもこの映画には魅力ある中年が何人も出てくる。ジェイシーの母親、フットボールのコーチの妻、ダイナーのウエイトレス。それぞれが失った時間の亡霊を追い求めているが、中年となった今の時間をひたすらに生きている。生き生きとして美しい若者たちの危うさに対して、寂しく枯れてはいるが大地に根ざしている中年たちは力強い。その典型がサムなのだ。この役でベン・ジョンソンが助演男優賞を取ったのもうなずける(この映画は助演女優賞も獲得)。

青年は青年の立場で、中年は中年の立場でいろいろと考えることが多いこの映画。実は永遠の青春映画だったのだ。

「ボグダノヴィッチのヴィジョンは荒涼としているものの正直で、飾り気はないが印象的なモノクロ映像で、純真な少年が経験に揺れ動くぎこちない瞬間をうまくとらえている。そこには善悪の判断もなければノスタルジックな感傷もない。ひとつの時代の通史のような映画で、悲劇に満ち、悲しみが重い影を落としている(JKI)」(『死ぬまでに観たい1001本』より)